Q&A

放射線について

  • 放射線とは、物を構成している原子の中の原子核から放出される高いエネルギーをもった光の速さに近い高速の粒子や電磁波です。また、放射線は目に見えませんが、物質を透過する性質や電離(イオン化)させる性質があります。 高速の粒子の放射線には、「アルファ線」「ベータ線」「中性子線」などがあり、また波の性質を持つ電磁波では、「エックス線」「ガンマ線」という種類の放射線があります。 また、放射線を出す物質を「放射性物質」といい、放射性物質が持つ放射線を出す能力のことを「放射能」といいます。
  • 放射線に関連する単位には、様々なものが使われており、主に放射線に関する単位は「シーベルト(Sv)」と「グレイ(Gy)」、放射能に関する単位は「ベクレル(Bq)」の3つが使われています。
    「シーベルト」は放射線の人体への影響の大きさを表す単位、「グレイ」は放射線のエネルギーが物質や人体に吸収される量を表す単位、「ベクレル」は1秒間に放射線を出す放射性物質の量(能力)を表す単位となっております。例えば、「グレイ」はガンの治療や放射線滅菌などの際の放射線量を表す単位として使われており、用途別に単位の使い分けが必要です。
  • 「被ばく」を漢字で書くと「被曝」、つまり放射線に「曝(さら)される」という意味になり、医療などにおいて放射線を受ける場合は、この表記となります。「曝」は常用漢字ではないため、一般的に「被ばく」と表記されることが多いです。
    「被爆」とは爆発物によって被害を受けることをいい、その爆風や熱線、放射線の影響を受けることを表します。
  • 被ばくをしても、人が「放射化」する(つまり放射能を帯びる)ことはありません。但し、中性子線を浴びた場合は、体内のナトリウムが変化して放射能を帯びることがあります。しかし、中性子は原子力発電時の核分裂の際に出るものであり、自然にある放射性物質が中性子を出すことはまずありません。
  • 放射性物質から放射線を出さないものに変えることができたら安心できますが、残念ながら何をしても人工的に放射線を出す性質をなくしてしまうことは出来ません。しかしながら、放射性物質は放射線を出すと放射線を出さない安定した物質に変化していくので、実はだんだんと減っていくものです。例えば、放射性物質のラドンの場合は、3.8日でその放射線量が半減(半減期という)します。半減期は物質によって異なり、短いものだと数分、長いもので数十億年のものもあります。短いものの代表ではラドン220で、半減期は約55.6秒、逆に長い放射性物質の代表格はプルトニウムやウランです。半減期がプルトニウム239は約2.4万年、ウラン238は約45億年と非常に長いものもあります。
  • 自然放射線の量では、人体への影響は確認されておらず、発病への影響はないと考えられています。我々は自然からの放射線を、1年間で約2.1㍉シーベルトを常に受けています。外国では放射線量がもっと高い地域もありますが、放射線の少ない地域の住民と比較しても健康影響の差はほとんど確認されていません。
  • 体の外から放射線を浴びることを「外部被ばく」といい、体の中に取り込んだ放射性物質から放射線を浴びることを「内部被ばく」といいます。
    外部被ばくとは、地面や宇宙などから受ける自然放射線や、病院などの検査で受けるエックス線撮影などによる人工放射線を受けたりすることによって起こります。
    一方、内部被ばくとは、空気を吸ったり、水や食べ物についた放射性物質を体内に取り込んだ場合によって起こります。放射性物質がいったん体の中に入ってしまうと、一定期間を過ぎれば体外に排出されますが、洗い流して簡単に取り除くことはできませんので、外部被ばくよりも注意する必要があります。
  • 人間の体は細胞で出来ています。細胞の中心部にはDNAがあり、DNAは2重螺旋構造、つまり2重の鎖で繋がれている構造になっています。細胞に放射線があたると、このDNAの鎖が切断されてしまいます。もともと細胞の遺伝子は、DNAが切断されると自己修復能力が働き自然と治りますが、被ばく線量が多いと十分な修復が出来なくなり、特定の器官で細胞が多く死んでしまうと、その器官の機能が損なわれ、臓器不全となってしまいます。また、放射線により切断されたDNAに修復ミスが起こると、ガンを引き起こしたり、遺伝的影響の原因となります。
  • 過去からの放射線による人体影響の研究結果から、ある値以上の放射線を受ければ影響が出てくることが判明しており、一般的に250㍉シーベルト以上で白血球の減少、さらに7 シーベルト(7000 ㍉シーベルト)以上で死に至ることがわかっています。また、100㍉シーベルト以下の線量では身体への影響はないと考えられていました。
    しかし、現在では放射線がDNAを傷つけることは発ガンの要因の1つとなるので、被ばくを少なくすることは重要であるとの考え方がある一方、微量であればむしろ良いという研究報告も有ります(例として秋田県の玉川温泉、約0.2~1.0マイクロ・シーベルト毎時)。
  • 外部からの放射線から身を守るには、①放射性物質から距離をとる、②放射線を遮る、③放射線を受ける時間を短くするといった方法が有効です。
    例えば、「①距離をとる」の対応については、放射性物質からの距離が2倍になると、受ける放射線量は4分の1になります。また、歯のエックス線写真の撮影時に重いエプロンを着ることがありますが、これはエプロンの中に鉛が入っており、体の余計な部分にエックス線が当たらないように遮蔽をすることで、放射線の受ける量を軽減しています。このように放射線の性質を正しく知ることで、少しでも外部からの被ばく量を減らすことが出来ます。
    具体的に、非常時の放射線から身を守る対応としては、市町村や国・県などからの正確な情報・指示に従い、屋内退避(放射線を遮る)、避難(放射性物質から距離をとる)をしてください。
  • 現在は人工の放射線が色々な分野に使われています。身近な例としては、病気の診断にエックス線検査・CT検査、がん治療での放射線照射、また金属の欠陥等を発見するためのエックス線検査、自動車のタイヤの耐久性向上、医療器具の滅菌・殺菌のための放射線照射、農作物の改良など、様々に利用されています。
  • ベクレルは放射性物質が放射線を出す能力を表します。一方で、シーベルトは人体が放射線で受けた影響を示す単位です。同じベクレル数であっても、放射性物質ごとに放出されるエネルギー等が異なることから、人体に与える影響(シーベルト)が異なります。放射性物質の種類やどこから取り込むかにより影響が異なるため、個別に換算係数が異なります。
  • 放射線防護を検討する「国際放射線防護委員会(ICRP)」で、放射線防護・安全の立場から、どんなに少ない放射線でも放射線を受けると影響を生じる可能性があるという想定で検討がされています。しかし、放射線を受けた量に応じて影響の割合が変わってくる可能性があるという点で、実際上影響を考える必要がある放射線の量は、日本の原爆被害を受けた生存者の調査などからわかっているように、数百mSvという大きな線量の場合でも100mSvよりも低い線量であっても、がんなどの発生について有意な増加は認められていません。 したがって、私たちが自然から受けている放射線やICRPが勧告している線量当量限度の放射線の量では、人の健康に影響が認められないようなレベルと考えられています。

放射線測定について

  • 自然放射線は同じ建物内でも、場所によって放射線量が異なり、これには色々な理由があります。部屋のしつらえ、周りの建材の種類でも差が出ますし、例えば部屋の地面からの高さ、部屋の広さ、窓の大きさ、コンクリートの種類により、放射線量は違います。一般にマンションなどでは、住んでいるフロアが高い部屋の方が、地面から離れているので、大地からの放射線量が減るので低くなります。大きな部屋と小さな部屋で比較すると、小さい部屋では壁からの距離が短いので、放射線量は多くなります。また、窓がついていたり、隣室との境がコンクリートでないと、コンクリートで囲まれている部屋より放射線量は低くなりますが、コンクリートの中の砂利の種類にも関係します。花崗岩のような放射性物質を多く含む砂利が使われていると高くなります。
  • 密度の高い物質とは、単純にいうと原子番号の高いものとなり、単位体積中の電子の数が多いものとなります。放射線の透過力は、放射線が物質中の電子に衝突する確率が高いほど、散乱されて横にそれてしまい、まっすぐ進む割合が減ります。従って、物質の密度が高いと、放射線が単位長さを進む間に物質中の電子に衝突する確率が大きくなるので、透過しにくくなります。
  • 気温や、天候、湿度などで、放射線の数値は変わりません。しかし、厳密には雨の降り始めには大地からでてきて空気中に浮遊していた放射性物質のラドンやトロンが埃と一緒に落ちてくるので屋外では、地表面付近の放射線量は少し多くなります。宇宙からくる放射線量は時間と関係がありますが、大地、建物など周辺から来る放射線と同時に測るので、目に見える違いはありません。
  • 屋外での自然放射線測定において、例えば放射性物質を多く含んだ庭石等があれば石表面の放射線量は高くなります。また、カリ肥料にも放射性物質が含まれており、花壇などでカリ肥料を散布している場合は高くなります。
    屋内の測定では、コンクリ-ト建屋で、中の骨材の砂利に天然の放射性物質を含んだ物が多ければ、やはり放射線量は高くなります。
  • 岩石にも色々種類がありますが、例えば玄武岩と花崗岩を比べると、花崗岩の方が3倍くらい放射線量が高くなります。これは、花崗岩の中には自然界に存在する天然の放射性物質(ウラン、トリウム)が多く含くまれているため、他の石より放射線量が高くなります。つまり、岩石の放射線量の違いは、岩石が出来たときに放射性物質をどれだけ多く含んでいたかによって違います。
  • 放射線は放射性物質から出ていますが、一度に同じ方向にでているのではなく、線香花火のように(ランダム)にでているため、測定数値にばらつきがあります。自然放射線を測るためには、同じ場所で1000回測って平均をとると大体一定になるといわれています。これを一人で測るか、大勢が同時に測って平均をとると一定の値に近づきます。
  • 地表から高くなれば宇宙線の影響で数値は上がります。
    例> 地表:約0.08マイクロシーベルト毎時、富士山頂:0.2マイクロシーベルト毎時、12,000m:5.0マイクロシーベルト毎時、20,000m:13マイクロシーベルト毎時となります。
  • 自然放射線を測定する場合は、花崗岩や石像、コンクリートなどを測定すると、そこから出ている放射線を測ることができます。また、時間による変化を調査する場合であれば、測定場所と高さを一定にして測定を行って下さい。
  • 原子力発電所から運転に伴って放出される放射性物質が周辺の環境に影響を及ぼしていないことを監視するため、自治体や電力会社により環境放射線モニタリングが定期的に行われています。環境放射線モニタリングは、空間の放射線量を測定したり、空気・水・野菜や魚などの放射能を測定しています。

その他の質問について

  • 学習指導要領においては、中学3年生を対象に、「エネルギー資源」の項目の中で「放射線の性質と利用」にも触れることが定められております。その中で、放射線に関しては、「原子力発電の核燃料は放射線を出していること」「放射線は自然界にも存在すること」「医療や製造業などで利用されていること」が指導要領の解説として記載されており、放射線はエネルギー源としてとしてだけでなく、医療・工業・農業など社会の中で幅広く利用されていることを解説することが必要となっています。
    また、小学校においては、学習指導要領では記載がないため、独自の取組みとして福島県を始め、各教育委員会等で取組みをされている事例が発表されています。内容については、放射線から身を守る方法などについて取り上げる内容が発表されています。
  • 安定ヨウ素剤とは、放射能を持たないヨウ素(ヨウ化カリウム)を含む薬剤です。ヨウ素は人間の甲状腺に溜まりやすい性質があり、放射能を持つヨウ素131が空気中に漏れてしまった場合、摂取が予測される直前、または数時間前から直後までに服用することで、あらかじめ甲状腺に放射能を持たないヨウ素を蓄積させておくことで、ヨウ素131のほとんどを溜めることなく、体外へ排出させることができます。この安定ヨウ素剤は、原子力施設がある地域や、その近隣の地域に配備されています。
    服用に関しては、子供に対して効果的ですが、甲状腺の機能低下やアレルギー反応などの副作用もあり、医師等の指示に従って服用することになっています。また、100㍉シーベルト以上の放射線を甲状腺が受けると見込まれない限り、服用するべきではないとも言われています。 ※詳しくは、日本医師会のまとめた「原子力災害における安定ヨウ素剤服用ガイド」をご参照下さい。
  • 各都道府県や市町村では、地域防災計画が策定されています。一般災害対策から原子力災害対策を始め、地域によっては原子力災害住民避難計画まで策定されています。そのため、住んでいる自治体のHP等を確認しておき、有事の際の対応について日頃から情報収集をしておいた方が良いと思います。その上で、有事の際には自治体からの正確な指示・情報などを収集して、落ち着いて指示に従い、行動することが大切です。
  • 放射線自体は目で見ることは出来ませんが、可視化する有効な方法の1つとして、「霧箱」というものがあります。霧箱はスコットランドの物理学者、チャールズ・ウィルソンが1897年に発明をし、この研究で1927年にはノーベル物理学賞を受賞しました。この霧箱を使うと、放射線そのものは見えませんが、放射線の飛んだ跡を観察することができ、児童・生徒も自然放射線の存在を理解するのに有効です。
    他にも、数値として放射線量を測ることができる「放射線測定器」を利用した授業も有効です。放射線測定器を利用した実験方法は、参考資料のワークシート等をご参照下さい。
  • 原子力災害への備えについてですが、原子力災害のみならず、どのような災害に対してもそうですが、「備えあれば憂いなし」と思います。何事も平常時から意識をしておくことが大事だと思います。
    なお、防護服については、放射線を遮る目的のものではなく、放射性物質が身体に付着するのを防ぐことを目的としたものですので、長袖の服などで対応することができます。 また除染についてですが、有事の際に放射線量を測定し、数値が高い場合は当然のことながら、除染作業が必要になることも考えられます。
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