図5-4にはPt/Al2O3、DP-2サンプルにおけるCO酸化反応を温度を変えながら、前述の方法で調べた結果を示した。図では反応温度の低いほうから高い方へ並べているが、実際の測定ではランダムな順序で温度を変えている。いずれもQ-Massガス分析はStep 1〜6の全ステップに渡って行なっているが、Step 2のO2ガス導入時には全くCO2の生成が観測されなかったため、Step 3(時間t=190〜310sのCO+O2導入時)及びその前後の時間の部分のみを抜き出して示している。また、図の縦軸値はStep 5におけるバイパスガス分析でのCOのQ-Mass信号レベルを100%基準値とする相対値で示している。即ち、各瞬間のCO2収率は本図のCO2縦軸値、各瞬間のCO転化率はCO縦軸値を100%から差し引いた値として読み取ることができる。
反応温度が低いところ(343K以下)では、COの酸化反応は起こらずCO2の生成は全く見られない。図ではわかりにくいが空管で測定を行なった場合と比較してStep 3のごく初期のところ(約10秒以内)ではCOの吸着によるCOの消費が観測されている。しかしながら、その後は導入したCOが全て触媒層を素通りして出てきている。ステップ活性測定終了後の昇温処理においては、タイプIおよびIIの両タイプの脱離ピークが観測されており、気相にCO2の生成は全く見られなかったものの、この温度で既に反応中間体の生成が示唆される。
反応温度が少し高くなると(343〜380K)、Step 3の初期にCO2の生成が見られるようになる。このCO2生成はピークとして観測され、すぐに減衰してほぼゼロになる。反応ガスのスイッチングによるピーク状のCO2生成に関してはBoreskovの総説中においても記述があり、触媒表面上に吸着している酸素に対してCOが気相からアタックして反応が起きる(Eley-Rideal機構)が、すぐにLangmuir-Hinshelwood機構に移行するために減衰すると説明されている3)。興味深いのはStep 3(CO+O2+Inert)からStep 4に移行するところで、前述したように12秒間のみO2+Inertガス雰囲気となる(Step 3の雰囲気から気相COがいなくなる)が、ここでCO2の生成が起こっていることである。Step3の120秒の反応時間の間に生成した触媒表面での反応中間体と思われる吸着種が気相COがいなくなると同時にCO2として脱離してきていることになる。更に反応シーケンス後の昇温過程ではタイプI,IIの両者の脱離ピークが観測された。
更に反応温度が高くなる(380〜420K)と、Step 3の初期に見られたCO2の生成ピークが出て減衰した後、定常活性はゼロにならずに、ある一定の値で落ち着くようになった。特に、412Kでの時間変化は、t=210sまではCO2の生成が減衰するが、これ以降は徐々にCO2の生成が増加して定常値に近づいた。CO2の初期生成ピーク→減少→定常値とならずに、CO2の初期生成ピーク→減少→増加→定常値となることは、初期CO2の生成と定常活性に至るCO2生成の両プロセスの間に、触媒表面の酸化状態の変化あるいは吸着種配置の再構成が起こった結果ではないかと考えている。この温度域においても、Step 4の最初にはやはりCO2のピーク状の生成が見られた。反応シーケンス後の昇温過程では既にタイプIIピークの脱離温度域かそれよりも高い温度で反応しているために、タイプIピークのみが観測された。タイプIIピークに相当する吸着種の脱離とStep 3における定常活性の発現との間には関係があるように思われる。
更に反応温度が高く(420K以上)なると、CO2の生成は反応初期からほぼ定常に達した。CO転化率もCO2収率も100%に近くなっており、Step3の120秒間の分析時間内においては目立った経時変化は見られない。