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第25回LSSサイエンスカフェ

笑いのサイエンス
~科学技術と落語で解き明かす“笑顔”のチカラ~

サイエンスカフェ25

2025年10月18日(土)午後に第25回LSSサイエンスカフェ「笑いのサイエンス ~科学技術と落語で解き明かす“笑顔”のチカラ~」を来場(大阪科学技術センター8階 大ホール)とオンラインのハイブリット形式で開催し、140名のご参加をいただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

今回のLSSサイエンスカフェでは、技術者の視点から見た笑顔の定義・基準や、落語家の経験をもとにした「笑い」への見解など、私達を元気にしてくれる「笑顔・笑い」について、科学技術と落語2つの視点からご紹介いたしました。


■講 演
「笑顔あふれる未来社会を支える“ひと理解”技術」
瀧本 亜紀子 氏
(パナソニック ホールディングス(株) 技術部門 プロダクト解析センター デバイス・空間ソリューション部)
瀧本 亜紀子氏の写真

大阪科学技術館2階パナソニック展示ブースに設置しているマジカルミラーは、笑顔と重心のバランス、姿勢の一致度を定量化し、点数を競います。この測定項目の中でも、笑顔の測定を中心にお話します。

イギリスの心理学者リチャード・ワイズマンは「人は“まるでそうであるかのように”行動すると、実際にその状態に近づいていく」というas ifの法則を提唱しています。幸せになるためには、幸せになることを願うだけではなく、幸せであるかのように笑うことが重要です。

また、目の周りの筋肉と頬のあたりの筋肉をしっかりと使い、目尻を下げて口角を上げているような笑顔を「デュシェンヌスマイル」と言います。「デュシェンヌスマイル」はポジティブな感情を生み出して、精神的にも身体的にも健康になると言われています。笑顔の人物を見ていると、見ている相手の脳も刺激されて、ドーパミンやセロトニンと言った幸せホルモンが活性化します。笑顔には自分の心身を幸せにするだけではなく、周囲の人々も幸せにする効果があります。

本日デモ体験として実施している顔ヨガは、デュシェンヌスマイルをアルゴリズムに落とし込んでいるので、表情筋を鍛えてきれいな笑顔を作ることができます。

また、“ひと理解”技術であるデジタルヒューマンシミュレーションでは、体と心両方の状態を評価し、数値を定量化することで、新しいモノコト作りに繋げようと取り組んでいます。外見と内面の両方からその人の状態を可視化することで、その人が抱えている負荷の原因などを探ることができます。日々の状態をグラフ化することで、生活習慣や季節による体調の変化と関連付け、より良い状態に導くためにはどのように行動を改善していくのかを分析し、一人ひとりのウェルビーイングに繋げることを可能とします。

■講 演
「落語でわかる!笑いの秘密」
桂 文華 氏
(落語家)
桂 文華氏の写真

2代目桂枝雀は、笑いというのは緊張の緩和であると提唱しました。緊張の緩和は人々にとって心地よく、その心地よさが笑いを引き起こしていると考えています。人間は幼児期から青年期にかけて、段階的に心地よさによる笑いを獲得します。幼児期では、「いないいないばあ」などの繰り返しの笑い、学童期では言葉遊びや動きによる笑い、青年期以降は知識を用いた笑いや皮肉の笑いなど、発達段階に応じて笑いの幅が広がります。

落語は浄土宗の僧侶が説法を行う際に、内容を聞いてもらうために笑い話を作ったことが始まりだと言われています。堅い話ではなく、心地よく笑ってもらう話にすることで、深く聴き入りしっかりと理解してもらうことが目的です。落語は話者と聴者の共同作業であり、聴者側の聞く姿勢がないと成立しません。

落語を楽しむ方法として3つのことが挙げられます。1つ目は、面白い時には声に出して笑うことです。自分だけではなく、他者の笑い声を聞くことによっても気分が高揚し、笑いが広がります。2つ目は、能動的に面白い箇所を探して笑うことです。落語は話者による一方的な芸ではなく、聴者側がしっかりと聴き入り、想像することが重要です。扇子や手ぬぐいを用いた様々な表現や、上下を振った会話などを見て、聴者が能動的に物語を想像することで、笑いの量は増幅します。3つ目は周りの笑いに合わせて一緒に笑うことです。これらのことを踏まえると落語をより楽しむことができます。

■落 語
落語の写真

講演後は、桂文華氏による落語「ふぐ鍋」をご披露いただきました。

■フリーディスカッション

ファシリテーター:LSS委員

中舘 聡子 氏(読売新聞大阪本社 プロモーション統括本

部 わいず倶楽部 幹事)

藤井 律子 氏(大阪公立大学 人工光合成研究センター

准教授)

フリーディスカッションの様子

今回のフリーディスカッションでは、参加者の方から活発な質問があり、講師から専門的にわかりやすく回答いただきました。

「地域や文化によって笑い方に違いはあるのか」という質問には、「欧米は普段から笑顔などのリアクションが大きいが、日本人はあまり感情を表に出さないので、心の中で笑っていても声に出して笑うことが少ない。AI モデルは欧米のものが主流になっているので、しっかりと歯を見せて笑わないと笑顔という評価にならないことがある。そのようなモデルでは日本人の本当の内面については

わかりにくいので、細かい変化を求める必要がある」とのご回答をいただきました。
■体験・パネル展示
笑顔を作る顔ヨガ体験の様子

講演前後の時間には、パナソニック ホールディングス(株)様による「笑顔を作る顔ヨガ」体験や、講演に関連するパネルの展示を行いました。また、大阪科学技術館2階 パナソニックブースでは、“ひと理解”技術を体験できるマジカルミラーも体験いただきました。


参加者の皆様からは、「科学的な面からと、落語を通しての理解との両面からでわかりやすかった」「科学は縁遠いものと思いがちなので、毎回テーマを見てこんなに身近なものなんだと勉強になる。これからも身近なものと科学の結びつきなどを解き明かすような講演を楽しみにしている」などのコメントをいただきました。

協賛・協力機関:
大阪ガス㈱、㈱大林組、カナデビア㈱、サントリーホールディングス㈱

LSS(レディース・サイエンス・セッション)では、気軽に科学に親しんでいただくために、科学技術広報として2011年より「サイエンスカフェ」を開催しております。

「このようなテーマのお話を聞きたい」、「LSSと共同・協力してサイエンスカフェを開催したい」など、LSSの活動にご興味ございましたら、ぜひlss@ostec.or.jpまでご連絡お問い合わせください。

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