標準合金計8種類について、JIS H7202-1995「水素吸蔵合金の水素化速度試験測定方法」6)とJIS H7203-1995「水素吸蔵合金の繰返し水素ガス吸蔵・放出特性試験方法」7)を参考にして合金としての水素吸蔵速度、および水素放出速度を測定した。試料容器はJIS H7202-1995に掲載されているものと同一の銅製容器を使用した。この容器は熱伝導性の高い銅製で、さらに試料重量1gに対して十分に重い約4kgの質量を持っており、水素吸蔵および放出による合金の反応熱の影響を出来るだけ小さくするためにヒートシンクの役割をしている。
(1)試験方法試料は、Aのアトマイズ品以外は機械粉砕後に篩い分けをして、粒径を150μm〜500μmに調整した。その後、標準容器に試料を入れ、活性化処理を行った後に安定化処理として水素加圧と真空脱気を10回繰り返し、20℃での吸蔵速度測定と60℃での放出速度測定を行った。なお、Aのアトマイズ品は表面の酸化物皮膜を除去するため、塩酸5vol%水溶液にて酸洗浄を行い真空乾燥後に試験に供した。
試験装置の構成図を 図 2-1 に、試料容器の写真および合金充填状態の写真を写真2-1,-2,-3,-4に示す。また、使用した機器と装置体積を以下に示す。
水素吸蔵と放出時の水素圧力の変動幅はなるべく小さい方が良いが、あまり蓄圧器の容積を大きくして圧力変化量を小さくすると、水素化量の測定精度が低下してしまうため、圧力変化量が0.06〜0.1MPa程度となる様に蓄圧器と配管の容積を約300ccとした。
| 1) | 圧力計(ひずみゲージ式) | PG-50KU(共和電業製) |
| 2) | 圧力計アンプ | CDV-230A(共和電業製) |
| 3) | 記録計 | LR12000E(横河電機製) |
| 4) | 恒温水槽 | BK-43(ヤマト科学) |
| 5) | 配管体積(リザーバー+配管) | :V=300.1 [cc] |
| 6) | 試料容器死体積 | :Vr=2.6 [cc] |
| S:水素供給系へ接続 G:圧力計 C:畜圧器(リザーバー) D:水素放出系へ接続 | ||
| P:真空ポンプへ接続 T:恒温水漕 R:試料容器 | ||
8種類の標準水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出速度試験結果のグラフを 図 2-2,-3,-4,-5,-6,-7,-8,-9,-10,-11,-12,-13,-14,-15,-16,-17に、 各合金の吸蔵・放出試験における総吸蔵・総放出量の80%を吸蔵放出するのに要した時間と吸蔵放出速度を 図 2-18,-19,-20,-21に示す。
総吸蔵・総放出量の80%を吸蔵放出するのに要した時間と吸蔵放出速度は、JIS H7202-1995「水素吸蔵合金の水素化速度試験測定方法」に定義されている、「80%吸蔵時間」は「水素化量が、水素化速度試験後の平衡状態における値の80%に達するまでの時間」、「80%吸蔵速度」は「80%吸蔵時間における水素化量を80%吸蔵時間で除した値」を参考に決定した。
80%吸蔵に要した時間は合金E,F以外は何れも4秒以内と非常に短時間で終了している。標準合金の平衡圧は40℃平衡放出圧を基準として合わせたため、ヒステリシスの大きい固溶体型の合金E,Fは、他の合金と比較して平衡吸蔵圧が高くなっている。そのため、吸蔵速度測定時の印加圧力と平衡吸蔵圧との圧力差が他の合金より小さくなっている影響で、吸蔵時間が遅くなったと考えられる。しかし、合金E,Fでも10秒以内に終了しており、充分な吸蔵速度を有している。
80%放出に要した時間は、全ての合金で20秒以内となっている。固溶体型の合金E,Fも、平衡放出圧を合わせて、印加圧力と平衡圧の差が他の合金とあまり変わらない放出速度測定では、他の合金と差の無い値となっている。